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2008年6月 8日 (日)

サマータイムで直さなきゃいけないのは、 ソフトウェアだけじゃない

毎日新聞 2008年6月7日 東京朝刊
地球温暖化対策:自公が政策案

サマータイムの10年3月導入も盛り込んだ

省エネ効果は無い、 つまり地球温暖化対策にはなりえない、 って話がさんざんでてるのに、 まだ言い張りますか~!? (--;

※ 省エネ効果は無い、 逆に増える、 という研究はいっぱいあるけど、 最近ではコレとか。

Does Daylight Saving Time Save Energy?
Evidence from a Natural Experiment in Indiana

Matthew J. Kotchen
UC Santa Barbara and NBER

※ 論文じゃなくて、 日本語の意見書だけど読みやすそうなの。 ( ただし 2005年 )

今、サマータイムは必要か?
弁護士 鴨田 哲郎

で、 中さんの blog にコメントしたのだけど、 提案してる連中は、 60年前の失敗 の反省をしてるようすもなさげだし。
# 「翌年、政府は公務員の出動時刻を9時に繰り下げた」 って、 自分たちだけさっさと夏時間をやめたわけだ (--;

それでもどうしてもヤル、 っていうなら 5年は準備期間を取ってもらわないと、 ソフト・ハードの対応が間に合わないでしょうね。


◆ ソフトウェアの対応

時刻データの持ち方は、 日本標準時のまま ( あるいは、 この際だから世界標準時に変えるという手も → 内部時刻は UTC で持たせよう campaign )
ただし、 入出力時に夏時間に換算するために、 毎年の夏時間の開始・終了日時を記録するテーブルを追加

※ いま提出されようとしてる法案では、

サマータイム:10年3月導入の法案提出へ 超党派議連
毎日新聞 2008年5月29日 20時30分
毎年3月の最終日曜日に時計の針を1時間進めて、10月の最終日曜日に元に戻すことで時刻を調整する。

   …と、 毎年切り替わる日が変わります。

そして、 時刻を扱うプログラムは、 夏時間の間は時刻テーブルを 1時間繰り上げて計算するように、 プログラムの修正が必要です。
・給与計算 ( 定時 18時 → 17時 等 )
・駐車場の自動清算機 ( 割引時間帯などを 1時間繰上げ )
…etc.

さらにやっかいなのが、 表示や帳票で夏時間を識別できなければならない場合。
たとえば、 給与計算の出退勤時刻の記録。
「10月最終日曜日の 2:30 に退勤」 という意味の表示ではダメなんです。
これは夏時間 ( 標準時で 1:30 のこと ) なのか、 その 1時間後の標準時なのか、 目で見て判断できなければなりません。
つまり、 夏時間なのか標準時なのかを識別する記号を追加する必要があります。
「(夏)2:30」 といった表示にする必要があるわけです。
帳票の場合は、 その1文字を追加するために、 帳票設計が崩れることも多いでしょう。
そして、 ハードにつながる話なんですが、 たとえば、 生鮮食料品の加工時刻表示は、 場合によっては現在のハードでは印字できないケースもあることでしょう。


◆ ハードウェアの対応

上に書いたように、 夏時間から標準時に切り替わる時間帯に時刻を表示したり印字したりするハードウェアには、 改修や取り替える必要が出てくる可能性が高いです。
タイムカードを打刻するタイムレコーダーは、 独立タイプのものは確実に交換ですね。
タイマー予約が出来る家電も全部、 ですね。 ビデオデッキから、 電気釜まで。
ソフトの改修だけじゃダメで、 予約するときに10月最終日曜日の 「(夏)2:30」 と 「(標)2:30」 を区別して入力、 表示できないといけませんから。
# ちなみに、 夏時間対応 していない 家電なら、 人間が換算してセットするだけです f(^^; 

そのほか、 電波時計も、 切り替え時には瞬時に補正が掛かるように ( これはたぶんソフト改修だけ ) とか、 まぁおよそ身の回りにある時計が組み込まれた電気製品は、 なんらかの影響を受けそうです。 また、 時刻を調整して回るのがタイヘンな街頭の時計や、 パーキングメーターなども、 きっと全部交換でしょうね。


さて、 それだけの買い替え需要が出るんですから、 経済的効果は大きく ( つまりそれだけ、 温暖化ガスの排出も増え )、 経済界が期待するのも分からなくはありません。

ですが、 夏時間のある地域用にすでに輸出しているタイムレコーダー会社とかはともかくとして、 ソフトウェアは、 あと 1年半でなんとかしろというのはムリです。
2000年問題でも大騒ぎしましたが、 夏時間対応はさらに面倒なのです。
面倒だということは、 改修後に、 2000年問題のとき以上のトラブルが発生するということ。

今週法案が成立するとしても、 修正箇所の洗い出しと修正方針の策定、 そして予算取りまでで 1年ちょっと。
2009年下期から変更の設計に入って、 2010年初 ~ 2010年下期にかけてが改修の開始。
すると、 早いところでは 2010年 3月から、 遅いと 2011年 3月から試験が開始。
# 遅いといっても、 法案成立後、 直ちに対応を始めてるところですよ。

少なくとも 3回は実際に即した試験をしたいですから、 テスト完は、 2012年 11月 ~ 2013年 11月。
すると、 本番は早くて 2014年春から。



# え!? 上に書いたような特需で、 IT 業界もウハウハだろう、 って?
# サマータイム法案に、 「この法によって生じるソフトウェアの改修費用は、 全てその所有者が負担するものとする」 というような条文でも追加しといてもらえればね~
(w
#  ( 実態は、 相当な額、 ヘタすりゃ全額が 「瑕疵担保責任」 として、 ソフトハウスの負担に…
(--; )

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コメント

> コンシューマ向けにWebサービスやってる所は誰にも責任転嫁できずに自前で改修
…それも確かにタイヘンですな。

本文には書かなかったけど、 「今でも (まともな) 開発者が足りてないのに、 こんなもんやられたら、 日本のソフトウェア業界は人材不足でボロボロになるぞ!」
中国やインドに外注? 改修箇所を探して、 仕様書書くのは誰よ。 上がってきたプログラムをテストするのは誰よ。 実際にコードを直す工数より、 そっちの方がたくさん掛かるんだがね。

# で、 異常感想注意報へのトラックバック先間違えてたので、 追加 f(^^;

投稿: biac | 2008年6月 8日 (日) 23時06分

>「瑕疵担保責任」
本来、今の日本には存在していなかった制度なので「瑕疵」にはならない筈ですが、そこら辺を力関係でねじ込む所はあるでしょうねえ。

て言うか、コンシューマ向けにWebサービスやってる所は誰にも責任転嫁できずに自前で改修です。費用もかかりますが、その工数分新規開発が止まるのも極めて痛いです。

投稿: テオ | 2008年6月 8日 (日) 22時21分

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» 坂村健 : 日本はサマータイム廃止こそ提案すべき [biac の それさえもおそらくは幸せな日々@nifty]
毎日新聞 2008年6月8日付朝刊の 「時代の風」 欄に、 坂村健教授がサマータイム問題について寄稿しておられます。※ 同社のサイトには掲載されていないので、 全文を読むには図書館などに行くか、 転載しているサイトを探してください。 → 例えば、 Internet Zone::WordPressでBlog生活※ 以下の... [続きを読む]

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