メイプルタウンネットワークでの「萌え」の用例を探る
川俣氏が、 『「萌え」はメイプルタウンネットワークでの恐竜惑星の話題を起源とする 《調査中》』の中で、『ジーンダイバーのボードでの「萌え」の初出は94/10/12 07:42:23』であると書かれています。
それより以前の用例は無いだろうか… と探してみたところ、 見つかりました。 f(^^;
日時 | 作品 | 用例 | コメント |
---|---|---|---|
93/07/22 02:22:26 | 恐竜惑星 | 萌ちゃん、燃え燃え☆! | 「萌え」の用例ではない。 (後述) |
94/01/06 20:04:09 | 赤ずきんチャチャ | 萌え萌え(ぉ | 1月7日の放映開始を前に、萌えているもの。 |
94/05/16 17:41:10 | セーラームーン | 萌え~萌え萌え萌え~♪ まこちゃん萌え~♪ | この時点では、土萠(萌)ほたるちゃんは、なかよし紙上には登場していたが、TV ではまだ。 |
94/10/12 07:42:23 | ジーンダイバー | いま、萌え萌えのアニメは、チャチャとジーンダイバー | 川俣氏の報告にあるもの。 |
公開されているログでは、 94年の 1月まで遡ることが出来ました。 ただし、 恐竜惑星の萌ちゃんが語源である、 とする根拠は、 やはり発見できませんでした。
メイプルタウンでは、 次のような意見がありました。
01/08/19 20:27:03
「萌え」の発祥 (Re: 恐竜惑星 第1部 終)今回のレス元でもある恐竜惑星の一連の書き込みで萌ちゃんに”燃え”ていた当時の ログを読み返して、燃え→萌えの変換はここでなされたと見ているのです。
検索を使い調べた限りではレス元のMINEさんの書き込み(93/07/22)から始まり、 Article 5334 in #119(94/05/16)での汐風さんの書き込みで、今広く使われている意味 での”萌え”が確認できました。
しかし、93/07/22 の書き込みは、 上記の「萌ちゃん、燃え燃え☆!」であり、「萌え萌え」ではありません。 また、 94/05/16 のは、 セーラームーンであって、 恐竜惑星に関係した書き込みではありません。
「萌ちゃん、燃え燃え☆!」が、 「萌ちゃん、萌え萌え☆!」に変化することは、 いかにもありそうなことだとは思います。 ですが、 残念ながら、 その経緯を証明できる書き込みは見つけられませんでした。
◆ 土萠ほたるちゃんは、 語源ではない
ずっと、 ほたほたが語源だと思っていましたが、 今回の探索で、 これはありえないことが判明しました。 なにしろ、 時系列は次のようになっていたのですから…
- 1994/01/06: メイプルタウンで「萌え萌え」 (上表)
- 1994/2: なかよし3月号 ほたるちゃん初登場 (ただし、 名告るのは 4月号)
- 1994/11/05: TV 初登場 (セーラームーンS 第23話)
ちなみに、 「萠」と「萌」は異体字 (同じ漢字なのだが、字の形が異なる) であり、 通常は混用しても構わないものです。 人の名前や地名となると、 歴史があったりするので、 混用すると人によっては怒られます。 f(^^;
→ 異体字リスト
◆ 高津萌ちゃんが語源かもしれない?
Web ページを探検していく中で、『「太陽にスマッシュ」というコミックの主人公、 高津萌ちゃんが、 作中で「萌ちゃん燃え燃え!」などと言っていたのが語源』という説も見かけました。
それでは、 と、 「太陽にスマッシュ 高津萌」で検索してみました。 高津萌ちゃんというのは、 どんなキャラなんだろう、 と。 ところが。 見つかったのは、 ほとんどが「萌え」の語源を論じているページで、 肝心の作品の内容とか高津萌ちゃんのキャラとかは、 まったくといいほどわかりません。
連載時期が 93年であり、 連載誌がセーラームーンと同じ「なかよし」だったようなので、 「萌え」を論じるような人々が読んでいた可能性は大いにあるのですが… 用例も見つからないし、 どんなキャラクターだったかも不明だというでは、 語源であるとするには弱いと思います。
(高津萌ちゃんの項、22:50頃に追記)
◆ 恐竜惑星より昔から使われていた(?)
Google で検索していたら、 さらに前から使われていたのだ、 という意見も見つかりました。 しかし、 残念ながら裏を取ることができませんでした。
昔のもな見
2003年10月30日 萌えー実は「萌え」という言葉は恐竜惑星が始まる93年以前から、パソコン通信の世界では(少なくとも鮪系と呼ばれるBBSでは)普通に使われていました。
もな兄の最古の記憶では、一本木蛮先生だったか大橋薫先生だったかが萌という主人公の話を描いていて、雑誌(たぶんファンロードだと思います)で萌ちゃん萌えーという投稿があったそうです。
◆ 危険という名の滝をくぐり抜け、 その奥に伝説の正体を求める者よ!
私の探求は、 ここまでです。
ちなみに、 手元にある 1991年~1995年の Nifty と ASCII NET のログも grep してみましたが、 「萌え」の初出は 1994/10/27、 「恐竜惑星」の初出は 1994/10/26 でした。
(友人の娘、 萌絵ちゃんに言及したメールがけっこう引っ掛かって、 びっくりしました。 当時はマメにメールしていたんだなぁ…)
それと、 いろいろログをみていたら、 なんとなくですが鮪系が発祥の地ではないか、 という気もしてきました。 (MAG や MASL のファイルに「~萌え」と付いたものが多かった、 というだけですが)
1993年、 あるいはそれ以前から見かけてたような気がする、 あなた。 すこしばかり探求の旅へ出てみませんか?
初出: 2004年3月21日
http://akari.kabe.co.jp/MagSite/Content.modf?id=20040321171546
(2010/9/18 追記)
KPS 慶應サイコロジー・ソサエティー
「Persona Vol.13第3号」 (2005/8/13発行) に掲載の論考 『「萌え」の国語学』 の中で、 初出 URL が引用されています。
また、 初出時の URL 宛てに戴いたトラックバックを以下に掲載しておきます。
» 萌えるアキバ [異常感想注意報]
萌えの「萌」の時も分からんじじいがこんな事を書くものだからスラドでネタにされてい [続きを読む]
受信: 2004年 5月27日 22時13分
» そして、萌えはどこへ行く? [Tierra Esperanza]
最近、猫も杓子も萌え萌えブーム。
「萌え」の語源には諸説あります。一番良くいわれるのはNHKで放送された「恐竜惑星」(93.4-94.1)の主人公「鷺沢萌」からきたとするものが有力です。これは岡田斗司夫の「オタク学入門」に記載されたことから、定着しましたが、彼の書物は基本的に根拠がとぼしく、資料としてはほとんど利用できないものです。
その他の説としては「美少女戦士セーラームーン」に登場する「土萌ほたる」(アニメでは94年の「~S」から登場)というものがあります。
私が入手できた資料では「聖まりあんぬ」というパソコン通信(BBS)のログに「萌え」の言葉が出てきます。これは「太陽にスマッシュ」(93年、『なかよし』に連載)の主人公、「高津萌」に対して使われたものです。
95年に作成された、「聖まりあんぬ辞書 (Revision 2.36i,1995.1.7)」によると
<B>萌~~~~~~~~~
インド人(MRIA0042)が「太陽にバックスラッシュ!」に登場する「高津萌」ちゃんに萌える行為、もしくは萌えている書き込みのこと。それ以外の用途に用いると命に保証はない。デェヴぁ~~~~~~~~~?!</B>
と解説されています。「デバイス」を「デェヴァイス」と表記するなど、当時の他の用語に関する興味深い記述もありますが、ともかく、実際に入手できた資料としては、これが最古の用法だと思います。
ちなみに、この辞書は長期間使用されていなかった中古のX68000proというパソコンから吸い出したもので、最近の捏造の可能性はほとんどありません。
また、同BBSでは「まどかもえ゛~~~~~~」の用法も見られます。この用法はきわめて重要な意味を持っています。どれが語源かということは別にして(おそらく聖まりあんぬでしょうが)、いずれの用法も、当初は名前をシャウトするという使われ方です。そこから別の用法に変わっていくわけですが、すでにその派生的な用法の萌芽が見られたということです。
さらりと重大な指摘をしてみましたが、何が書きたかったかというと、最近の鉄っちゃの暴走振りです。
「鉄道むすめ」はこんな目で見てるのか~となんか犯罪の香りすらしますし、「鉄道擬人化ONLY同人誌即売会 鉄娘ファン」なんかは、極北の感すらします。
とか最近、鉄に目覚めつつあるこの私。かなりデインジャー。 [続きを読む]
受信: 2005年 8月27日 20時25分
» 萌えの起源は、もうちょっと古いかも [名古屋・大須電波ニュース]
「萌え」という言葉が、どの時点で
派生したかという議論が最近になっ
て活発化してきている。
'90年代初頭からパソコン通信を
介して、実体験している自分も
非常にうろ覚えなのだが・・・ [続きを読む]
受信: 2006年 2月20日 03時55分
(2010/9/18 追記2)
「月刊MOE」 (旧誌名: 絵本とおはなし) 改名のいきさつに言及している記事を見つけました。
本記事で対象にしている 「萌え」 とは、 あまり関係は無さそうな気がします。
> 右月左月: 雑誌「月刊MOE(モエ)」の誌名の由来 (2007/3/8)
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