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2011年11月12日 (土)

[本] アジャイルサムライ ~ アジャイルマインドの伝道書

・ 公式サポートページ: GitHub - agile-samurai-ja/support
・ 参考書籍一覧: Amazon インスタントストア
《Amazon》 アジャイルサムライ

アジャイルサムライ −達人開発者への道−
Jonathan Rasmusson (著)   
2011/7/16
ISBN-13: 978-4274068560

 
この本には、 アジャイル開発プロセスの全ては書いてありません。 誰のために、 何のために、 どうしてアジャイルするのかを伝える本です。 もちろん、 「どうする」 の部分についても、 明日からの航路を自信を持って決められる程度にはざっくりとプラクティスの紹介がされていますが、 それはこの本の目的ではありません。
また、 この本は先に読み終えた何人もの方から、 読みやすいと聞かされていましたが、 たしかにそうです。 理詰めではなく、 "Feeling, don't think."(考えるな、感じるんだ!) の世界の本に思えます。 が、 しかしそう見せかけていて、 実は、 なぜそうすべきかを考えさせる本になっています。

第I部第1章の冒頭、 つまり本編の一番最初の一文

お客さんにとって価値ある成果を毎週必ず届けたいと思ったら、どうすればいいだろう?

第V部第15章の末尾、 つまり本編の一番最後の文章

・ 毎週、 価値ある成果を届けられているか?
・ たゆまぬ改善のための努力を惜しまず続けているか?
この2つの問いへの答えが「イエス」なら、 君はアジャイルだ。

なんのためにアジャイルソフトウェア開発をするのか、 という一文で始まり、 そのために改善し続けるのがアジャイルな開発者だ、 と宣言して締めくくられます。 それはつまり、 アジャイルソフトウェア開発の精神を伝えようとする本だということでしょう。 いわばアジャイルマインドの伝道書です。 その間に挟まれた本編は、 大事なことではありますが、 しかし枝葉です。 本質を踏み外さない限り、 取捨選択したり改善したりと自由に変えられる部分です。 この本を読む人には、 各章をこなす毎に冒頭と末尾の文を読み返してもらって、 なぜそうするのかを考えてほしいと思います。

本編は 5部で構成されています。
第1部 「アジャイル」入門
第2部 アジャイルな方向づけ
第3部 アジャイルな計画づくり
第4部 アジャイルなプロジェクト運営
第5部 アジャイルなプログラミング

それぞれのプラクティスを説明するにあたって、 アジャイル開発 12原則 ( アジャイル宣言の背後にある原則 ) との関係がきちんと語られます。
アジャイルソフトウェア開発プロセスとは、 アジャイルソフトウェア開発宣言  の 4つの価値観に同意し、 12の原則に従って実施されるものです (本書冒頭の一文は、 4つの価値観をみごとに一言で表しています)。
それぞれのプラクティスが 12原則のどれをどうやって実現するためのものなのかを、 理解して実行することは大切です。 なぜなら、 アジャイルプラクティスの幾つかは、 重厚長大なプロセスでも実施することができます (たとえば 「製造」 行程における Scrum や TDD の利用など)。 つまり、 アジャイルプラクティスをやっているだけでは、 アジャイルソフトウェア開発だとは限らないのです。

もうひとつ、 この本の最初の方に重要なことがさらりと書かれています。 (p.4)

お客さんの立場になって考えてみよう。 (中略)
君が信頼に足ると判断するのは次のどちらのチームだろうか?
・実施計画書や大量の製品文書、 作業報告書を納品してくれるチーム?
それとも、
・一番大事だと君が思う機能を実装して、 テスト済みのソフトウェアとして毎週必ず届けてくれるチーム?

おわかりだと思いますが、 後者がアジャイルなチームですね。
では、 アジャイルなチームが最強か? いいえ、 そうとは限らない、 と分かります。 なぜなら、 前者を信頼すると考えるお客さんも居るからです。 重厚長大な開発プロセスを望む顧客もいる、 ということを忘れてはいけません。 そのような顧客にアジャイルソフトウェア開発で臨めば、 「返り討ち」 に会うことでしょう。
日本でアジャイルソフトウェア開発を成功させるために今一番必要なのは、 後者を信頼すると言う 「アジャイルな顧客」 なのかもしれません。

「アジャイルってどうやるの?」 と外に答えを求めるのは、 愚問です。
「アジャイルな顧客」 に応えるにはどうすればよいか、 そう努力することです。

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