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2010年5月 5日 (水)

インターネット・ホットラインセンターの仕事ぶり

どうにもこのところ、 規制強化をしたいがために、 警察などの関連機関や法令が無能であるかのように書く恣意的な報道が多いようで。 今日のニュースでは、 インターネット・ホットラインセンターまで槍玉に。 (全文はこちら ⇒ Web 魚拓)

毎日jp: 児童ポルノ:遮断へ、来月にも具体策 規制範囲が焦点に
2010年5月5日 9時25分(最終更新 5月5日 9時34分)

 センターには09年、児童ポルノに関する通報が4486件寄せられた。だが、警察が立件できるのはごく一部に過ぎない。そこで画像の流通を一刻も早く防ぐ「切り札」と期待されるのがブロッキングだ。

この文章を読んで、 「ああ、 数千件の画像がほとんど放置されたままなのか。 それじゃブロッキングもしょうがないか…」 と思ったあなた。 読解力は正常です、 しかし、 騙されています。 ホットラインセンターは、 通報のほとんどを放置しておくような無能な組織じゃありません。
※ (2010/5/9 追記) もちろん警察だって無能じゃありません。 2009年に、 ネットワークを利用した児童ポルノ犯罪 (P2P も含むと思われる) の検挙件数は 507件。 ⇒ 警察庁 広報資料 「平成21年中のサイバー犯罪の検挙状況等について」 (平成22年3月4日)

あ。 ホットラインセンターの仕事ぶりを紹介する前に、 一言。
児童ポルノ画像の流通対策としての Web サイト ブロッキングは、 効果が薄いです。

  1. 国内の流通の主体は Web ではなく、 P2P です。 ( ⇒ 2009年07月12日 高木浩光@自宅の日記 - Winnyによる児童ポルノ流通の実態と児童ポルノ法改正の方向性 )
  2. 流通を目的として掲載している人は、 ブロックされたと気付いたら別の IP アドレスやドメインに引っ越すだけです。

どうしてもブロッキングをやりたいなら、 警察庁が IP アドレスなどを示して裁判所の執行命令を取ってプロバイダに命令する、 というような、 責任の所在が明確でかつ検証可能な方法でやってもらいたいものです。
 

さて。 ホットラインセンターは毎年、 受け付けた通報の統計を公表しています。 以下、 2009年度の報告書 「平成 21 年中のインターネット・ホットラインセンターの運用状況について」 から数字を抜粋してみます。

2009年度中に受け付けた通報のうち、
児童ポルノ (国内サイト) 3798件, (海外) 688件, (計) 4486件
※ 合計は報道された通り。

国内 3798件のうち、
警察に通報するまえに消滅したもの: 569件
警察に通報したもの: 3229件
※ 合わせて 3798件すべて。

警察に通報した 3229件のうち、 捜査上保全されたものやプロバイダ等へ削除依頼を行う前に削除されたものを除く 1891件について、 削除依頼。
その結果、 削除されたもの: 1727件
※ けっきょく削除されずに残ったものは、 差し引き 164件 (4.3%) (捜査上保全されたものを除く)。

通報されたうち 96% が削除されているのです。 これを 「ごく一部」 とはいえないでしょう。 記事を良く読むと、 「ごく一部」 なのは警察が立件した件数であり、 画像の流通を止められたかどうかとは関係無いことが分かりますが、 上述したような予備知識無しに読めば、 「誤解」 するのがあたりまえです。

なお、 削除されていない 164件については、 児ポ法 第二条3三、 センターの運用基準では 丸2 イ. (ウ) に該当するかどうか微妙なもの、 あるいは 18歳未満かどうかの判断が微妙なものではないかと、 個人的には推測しています。

運用ガイドライン 丸2 イ.
(ア) 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為が描写されている画像等、
(イ) 他人が児童の性器等 (性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。) を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為が描写されている画像等で、性欲を興奮させ又は刺激するもの (性器等にマスク処理が施されているものも含む。)、 又は、
(ウ) 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態が描写されている画像等で、性欲を興奮させ又は刺激するもの  (性器等にマスク処理が施されているものも含む。)

また、 海外 688件については、 そのうちの 637件 (93%) を INHOPE 加盟各国に通報しています。

これだけの仕事をしている組織を無能扱いしてまでブロッキングの導入を声高に主張する報道って… なんなんでしょうね。

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コメント

ここのURLと文書を一部転載してもいいでしょうか。
http://www4.hp-ez.com/hp/nikodouresistance/bbs/1
ここに載せたいのですが。

投稿: | 2010年5月11日 (火) 18時04分

お問い合わせありがとうございます。
引用元 (URL) を表示していただければ、 もちろん構いませんよ。

投稿: biac | 2010年5月11日 (火) 21時00分

> http://www4.hp-ez.com/hp/nikodouresistance/bbs/1
> ここに載せたいのですが。

リンク先、 見させていただきました。
なるほど、 引用の範疇に収まるかどうか不安なのでお問い合わせいただいた、 というところでしょうか。 念の為に了解を得ておく、 というのは良いことだと思います。


以下、 せっかくなので余談。

引用に当たるかどうかで問題になるのが、 主従関係。 被引用著作物が従で、 引用著作物が主になっていなければならないわけです。 ただし、 主従関係は量の多寡だけによるものではないので難しいわけです。
※ 昭和59(ネ)2293 「藤田画伯絵画複製事件」 (昭和60年10月17日東京高等裁判所) など。

たとえば、 Google の検索結果画面では、 Google オリジナルの文と、 検索結果 (被引用著作物) の文と、 1画面の中でどちらの占める量が多いでしょう?

まったくの私見ですが、 世界中の誰にでも読めるように公開されたインターネット上の文書というものは、 財産権としての著作権をほとんど放棄したに等しいもので、 著作者人格権だけが十分に尊重されれば良いのではないでしょうか。 そうであるならば、 インターネット上での 「公正な慣行」 というものもまた、 これまでとは違ってくるはずです。 出典を明示し、 丸ごとの複製でなければ、 量的な主従関係によらず引用と認めることが、 さきほど挙げた検索サイト、 あるいはいわゆる 「まとめサイト」 などの受容によって、 慣行になってきていると考えます。
※ 以上、 あくまで私見です。 ほんとうのところは、 いくつも判例が積み重なってみないと分かりません。

投稿: biac | 2010年5月11日 (火) 21時48分

なるほど、勉強になりました。最近ネットや、話を聞いたりしていたんですけど、
ネットで公開した人はある程度は覚悟しなければいけないと言われました。後、転載するときは了解を取るといいとも言われました。聞いた話だと営業目的でなければ法には触れないそうです。私はここで、URLや一部転載した文章を載せていました。
最近無断転載の話があったので不安になって聞いてみたんです。答えてくれてありがとうございます。

投稿: | 2010年5月13日 (木) 12時02分

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